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論文「露国に対する冬期作戦上の一慮」に込めた思い その五 これで良し、後は軍刀で貢献 [福島大尉の実行力を訪ねてー八甲田山以降の歩み②]

これで良し、を思う

始めに

12月下旬、満州三道覇にあった福島大尉は偕行者臨時増刊第1号(明治37年11月号)に掲載された旨の連絡と共に同紙を受け取る。すぐさま父泰七に便りを認めた。(明治37年12月30日付)
この便りの中の2点が当時の福島大尉の心境を良く表している、と心底思うので、暫し思いを巡らしたい。

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一つ、晴れがましさを楽しむ

本戦役に関する意見書が立見師団長から賞詞を賜り、今度偕行社臨時増刊号に掲載され、日本全軍の将校に配布されて聊か自分の身に光彩を添えた事などを喜んで欲しい、と伝えている。天覧に供されたことも本人が確認していれば書いたであろう。

私には3つの思いが伝わってくる。一つ目は第五連隊遭難による沈黙やt旅団長との確執等の浮き沈みを乗り越えて栄誉を掴んだ”得意”であり、二つ目は数ある将校の中かから選ばれて求められ、応えしかも全軍の将校に配布された、国家の危急に役立ったという達成感である。最後に、福島大尉が最も大事にして来た価値観である忠孝両全、忠君報国の誠と父母への最大の孝行、を果たした満足感である。

論文「一慮」に目を通した立見師団長は論文の素晴らしさ特にその”下敷き”、福島大尉の篤い思いや厳しい状況に身をおいたからこそ得られた知見、を即座に見透した。福島大尉を”識る”が故、である。

そして福島大尉は賞詞を賜った立見師団長に対して、賞詞を賜った事は有難いが、それ以上に”下敷き”を見透し、自分の心根を識って頂いている事に大感激した。士である自分をよく識ってくれている人の命とあれば死をも厭わない《士は自分を識る者の為に死す》、と思ったであろう。両者の心の交流の様が眼前に浮かんでくる。

二つ、今後への決意

是までは筆を以て他人に知られたけれども今後は筆を擲ち軍刀にて奇勲を奏し度きものと心願している、との決意の心境も父に伝えている。

是までは筆を以て他人に知られた、との言い回しから一廉の男になるという青年時の素志を軍人としては一廉の軍人になり事を為すと深化させた。即ち一廉の男になるという素志を貫いた感慨深さ様のものが伝わってくる。

そして早や戦の場に立つ自分の姿に思いを寄せ、軍刀にて奇勲を奏したい、という。その奇勲とは一体どのようなものであろうか?と私は答えを探し始めている。

この稿終わり

追記

ブログ『論文「露国に対する冬期作戦上の一慮」に込めた思い その二 虚脱、目標喪失感を思う』追記でふと思った、何か足りないものがある、との思いは論文「一慮」が全軍に配布されるという通知で解消された。その思いとは対露戦勝利の方略提言を目指す、であった。それが果たされた今思い残すことは無い、と思った。不十分に終わった全軍冬季行動標準提言を労い天が恵贈してくれたチャンスを活かしきった満足感でもあった。
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